遠州鉄道ルノーバス試乗



2001年10月14日〜12月24日の期間、静岡県の浜松駅前周辺をルノー製の小型路線バスが運行されています。このバスはルノー・マスター(商用車)をベースに、オムニノーバ社でバス車体を艤装したマルチライダーという車種。なお当ページでは便宜的にルノーバスと呼ぶことにします。

この路線を受け持つのは浜松市の委託を受けた遠州鉄道。路線バスにも関わらず期間が限定されているのは、大型バスでは入れない市街中心部を活性化。という理由で2002年度本格導入に先がけた実験走行のため。このルノーバスは西日本を中心に少しづつ導入され、関東でも埼玉県上尾市で走っているようです。保守体質のバス事業者が国産小型バスでなく、なぜルノーを? という理由は後述するとして、今回浜松で導入された折り、ちょうど時期的にクリオミーティングと重なったので、その道すがら試乗することにしました。題して 「ルノーバスに乗ルノー」 ツアー


ルノーを隠しきれないたたずまい


バス停に貼られたポスター
<< 浜松駅前バスターミナルが乗り場。路線名は 『浜松まちなかループ』。市内を循環し、30分弱で駅に戻ってきます。何周しても一乗車100円。8:00〜19:30をキッチリ15分間隔で運行。

あたりを見回すと、毎度おなじみの三菱ふそうやいすゞの大型バスしか見あたらない。とキョロキョロしていると。



>> 来ました、きました。こぢんまりとしたバスが。その控えめさが、どうあがいてもメジャーになれないルノーらしい。菱形エンブレムもしっかりついてます。フロントはベースとなった RENAULT MASTER そのもの。
赤くて小さなバス



モダンな車体デザインに丸い字体の路線名が入る。しかもその文字は白/黄/青と1文字ずつ繰り返され、なんだか幼稚園バスっぽい
<< いかにも社内案ですと言っているようなロゴが、クルマ自体のデザインとミスマッチなところには目をつぶりましょ。屋根後部が飛び出しているのは、冷房用エバポレーターが設置されているためと推測されます。



この車両って日産ディーゼルが輸入しているそうなんですね。提携がらみの事業は乗用車の分野だけかと思えば。ま、それもこのバス普及の理由の一つになっているのは間違いありません。ところでこんな情報を見つけました。埼玉県蕨市のコミュニティバス導入委員会報告書によると導入車種の検討で、国産メーカーにまざってフィアットや VW の名もリストアップされているなか、このバスについて

“なお、大阪市での運行においては、盛夏時の冷房に電力消費が大きくかかり、バッテリー上がりで運行できないケースも見受けられた”

ああ、やはりキミはヨーロッパ車...


クリオと同じパーツにニンマリ


>> ドアは日本の路線バスでは見られない外開き。バックミラーの外側に避けるように開きます。

でも電信柱やお店の看板が 「ここはワシの領地だ クルマのことなど知ったこちゃない」 とばかりにボコンと道路を占有する日本の道路事情では、開閉に神経を使いそうな。

ボディ外側にせり出す両開き扉



茶系のダッシュボード。メーターパネルと2本スポークハンドルはつや消し黒。もちろんマニュアル車。
<< 運転席の眺め。あれ運転手さんは? 「運転席を撮影していいですか?」 「それなら私が席を外したほうがいいでしょう」 まさか、邪魔だから退いてもらえます?と言ったわけではありません。コホン。



>> 運転席脇のエアコン吹き出し口とその空調ダイヤルはクリオ1と同じモノ。そうかぁ、この運転手さんもあのクリック感を味わっているのかぁ。と妙な連帯意識で心暖まるつかの間のふれあい。なんのこっちゃ。
クリオで見慣れたパーツがコンソールにビルドイン


バス平面図
バスの大まかな平面図です。座席数は運転席を除くと15名。前向き/横向きのシートが入り組んでいて、何でこんなややこしい配列にしているんだ?と思えばタイヤハウスを避けるため。その後輪はシングルタイヤのため車内の出っ張りは最小限。前輪はボンネットの中に収まるので室内への浸食は一切なし。ボンネットといえばこのバスって近代的なふりをして、実はボンネットバスなのよね。


フランス/スウェーデン混血車


扉から車内最後部まで一切段差は無い
<< ルノー・マスターはFF。駆動装置が前部に集約しているからこそ実現できたフルフラットな床のノンステップバス。そう、ここまで真っ平らな小型超低床バスは日本車にはない。だからルノー。バス事業者が急にマニアになったわけではありませぬ。



>> リアホイールハウス部。走ると車体がゴトゴトワナワナし、シートも薄くお世辞にも快適とは言えず。短距離輸送用と割り切った設計なのでしょう。ルノーの乗り味を期待すると裏切られます。

この車体はスウェーデン・オムニノバ社製。ってことはこの客室はスウェーデン車! そしてドライバーひとりがフランス車を味わう...

後輪もシングルタイヤのため、うっかりするとその存在に気づかないほど横幅が薄いホイールハウスの出っ張り。



正面上部の屋根にフランス製乗用車同様に延びるアンテナ
▼ もっとバスを見る
<< 中型バスでは走れないような、狭い路地から路地へとバス未開の地を結びつつ、その走りを30分足らず堪能。循環路線なので駅に戻ってバスを降り、ふと屋根を見るとフランス車のディテールを発見。



日曜日の午前中だからでしょうか、同乗したのは地元のかたらしきご老人とその娘さんと思われるひと組だけ。さっそくバスを活用しているんだねえ。と思ったらその人たちも1周して駅に戻ってきた。なんだ試乗組かい。しかもその2人はそのまま乗り続けて2周目へと突入。うっ、上には上がいる。みんながみんな試し乗りしかしない路線なんて、なんだか廃止直前の赤字ローカル鉄道みたいだなあ。

バス業界では、進むバス離れ&経営合理化、そして狭隘路を経由する地域密着型路線の新規開設という近年のブーム(?)により小型バス需要が増えているので、今後ルノーバスが全国各地で見られる機会が増えるかも。

02/11 補足:オムニノーバ社は2002年に倒産しました (T.T)
04/03 補足:▼Rohill Bodiesがこのモデルの製造を引き継ぐようです。


参考資料 ▼ 浜松市公式WEBサイト ▼ C.M.F. OmniNova


浜松駅前バスターミナルは6角形や8角形のような多角形の島状になっていて、バス1台1台がそれぞれの1辺に停まるスタイル。

最後にルノーバス以外の気づいたことを。静岡県内でも西の文化圏(名古屋圏)なんですねえ、浜松って。公共交通機関で言う西の文化圏とは車両グレードが高いってこと。遠州鉄道の路線バスは車両設備にかなり観光バスが入っています。しかもノンステップバス率が異様に高い。(※ 浜松市は全国初の「オムニバスタウン」に指定>快適な交通・生活の実現を目指すまち) 関東の鉄道やバスって、サービスしなくても人が乗るからねってなわけで、効率良く人を詰め込むことだけを考えた人間運搬機の気配が漂っているだけに、その違いをことさら感じます。この地ではそこまでサービスしないと、みんなマイカーに流れてしまうという切実さが現れていると言えましょうか。

そしてこのバスターミナルが多角形型をしているのに気づきました? 直線状にバスが並ぶ構造だと、縦列駐車が求められたり大きなハンドル操作が求められて苦労するところを、このバス1台1辺ごとに角度が変わるターミナルは見るからにバスの発着が容易そう。実際ここで観察しているとバスはスムーズに進入かつ発車。こう考えると西の文化はどこまでも人間中心主義なんだなあ。そして誰もが乗り降りしやすいルノーバスも2001年12月現在、本州以西を中心に活躍する...


− 遠州鉄道ルノーバス試乗 おわり −





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